中西裕(なかにしゆたか) 就実大学 人文科学部 表現文化学科 教授

水草水槽 Aqua Gardening

水槽

うちの水草水槽です。夜になると蛍光灯の光で水草が光合成を始め、水草の葉についた酸素の泡がきらきら輝きます。「いやし系」のインテリアといったところでしょうか。

水槽
 小さな熱帯魚やエビも住んでいます。エビと巻貝は水草や石やガラス面についた苔を食べて水槽をきれいにしてくれます。グッピーが子供を産みます。グッピーは卵胎生といって母親がお腹の中で卵を孵して、子魚を「出産」するのです。 魚たちがのんびりと泳ぐ姿や水草の輝きを眺めてゆったりとした気持ちになれたり、また、生き物のおもいがけない動きにびっくりしたり、まさに「生きた絵画」といった感じです。
 この水槽の環境を守っている最大の功労者は、実はバクテリアです。バクテリアはろ過槽(フィルター)や砂の中に住んでいて、水槽内の生き物が排出する有害な物質を無害な物質に分解してくれます。分解された物質は水草の栄養になります。水草は魚やバクテリアが必要とする酸素を排出します。

水槽大引越し

広島の学校に転任。水槽はどうする?!
 私は平成16年8月に東京都江東区から広島県広島市に引越しをしました。東京の戸板女子短大から広島の安田女子短大に転任するためです。

 そのとき最大の問題になったのが、趣味でやっている水草水槽です。箱庭のようにきれいに水草を植えて、小さな熱帯魚が泳いでいます。動くインテリアとしては最高なのですが、引越しとなると大変。以前、東京都内の引越しでは自分で運びましたが、それでも結構大変でした。それが今回は広島まで1000km近い大移動です。犬猫ならまだしも、水槽の魚となると、引越し業者は運んでくれません。かといって専門業者に頼むとたいへんな費用がかかります。

 遠距離なので、引越しそのものは2泊3日かかります。となると、魚をビニール袋にパックして宅配するというのも無理な話。そこでやっぱり「魚はバケツに入れて自分の車で運ぶ!」ということにしました。カミさんも免許を持っているので、車の運転は交代でできるし。

 ここに、全国のアクアリストの皆さんの参考になれば、という思いをこめて、水槽の運搬を中心に引越しの記録をまとめておきます。

引越し前日
 引越しはクロネコさんに頼みました。梱包サービス付きで(梱包料金を含まない)他社より安い見積が出たからです。引越し前日、梱包スタッフだけが来る予定だったのですが、引越しの少ない時期だけあってもうトラックが使えるからということで、梱包したものからどんどん積み込んでしまいます。夕方には家の中の大半の家具や荷物はなくなっていました。もちろんこの時点で水槽はまだ手付かずの状態。

 同じマンションの知り合いのKさんから電話がかかって「うちで晩御飯食べたら?」と言ってくれたので、それに甘えてそのお宅で奥様の美味しい手料理とワインをご馳走になりました。コンビニ弁当かなにかで済ませる予定だったところ、送別会みたいにもてなしてくださって、感激しました。人の親切というのは、こういうときに身に沁みるものですね。

引越し初日(1)
 朝早く起きて、水槽の解体にかかります。水槽にせよ、バケツにせよ、限られた容積の中で魚が生きていくために最も重要な問題は、魚の排泄するものをいかに無害な物質にして水質の悪化を防ぐか、ということです。水質が悪化してしまうと、魚は死んでしまいます。熱帯魚なので保温も必要ですが、今回は真夏なので、この問題はなし。どちらかというと高温対策のほうが必要なくらいです。

 その水質を保つ器具が「ろ過フィルター」です。通常は、これを家庭の電源で24時間動かし続けますが、引越しのときはそうは行きません。そこで、車のバッテリーの直流12Vを交流100Vに返還する機械をカー用品店で買いました。走行中はこれでフィルターを回す予定です。また、その補助に、電池式のエアポンプ(ブクブクと空気を送る機械)も用意してあります。エアポンプの空気の噴出し口に簡単なろ過フィルタをつけることができるので、ろ過の助けにもなります。金魚などはこの程度のフィルターで飼う場合もあるくらいです。

 上の写真の容器はゴミ箱としてホームセンターで売っていたものです。容量は45リッターですが、車の振動で揺れても水がこぼれないように、入れる水は30リッター程度にしておく予定です。フタ自体は本体にきっちり固定できるし、フタの中央部分を開くことができるのでろ過フィルターのホースを入れることもできて便利です。写真では、容器の横にドリルで穴を開けて電池式エアポンプを取り付けたところです。電池式のエアポンプは釣具店で売っています。生きエサを釣り場まで運ぶためのグッズです。また、左の写真のような簡単な台車も用意しました。30リッターの水は30kgですから台車がないととても運べません。

引越し初日(2)
 まず、水草を抜かずに根元からハサミで切って、取り出します。水草を抜こうとすると底床(砂利)が舞い上がって水を濁らせてしまうのです。水草をあらかた取り出したら、次に用意したバケツ(ゴミ箱)を台車に載せて、ここに水槽内の水を移します。水槽内の水をにごらせずに利用するところがポイントです。水はサイホンの原理で簡単に移すことができます。バケツに水を張ったら、早速エアポンプを動かします。

 水槽の中にはグッピーが30匹くらい、ほかにカラシン類の小魚が3、4匹います。グッピーは稚魚も混じっているので、バケツに魚を移す前にバケツに水草を入れておく必要があります。そうでないとグッピーの親が稚魚を食ってしまうからです。

 魚をネットですくってバケツに移します。グッピーは人懐っこいので自分からネットにどんどん入って来るので楽です。カラシン類は逃げ回るのでちょっと時間がかかります。水槽の中には魚のほかに苔取り役のミナミヌマエビが20か30匹くらい、石巻貝が5匹くらいいます。これらもすくってバケツに移します。

 生体をバケツに移したら、ろ過フィルターの給排水ホースを水槽からはずしてバケツのほうに設置します。写真左側のが外部式ろ過フィルターです。この中のろ材にろ過バクテリアが棲みついていて、このバクテリアが水をきれいにしてくれる働きをするのです。

 次に底床(底砂)を取り出します。底砂の中にもバクテリアがいるので、気休め程度ですが、一握り、二握りくらいバケツのほうにも入れておきます。それ以外は、水を切って分厚いビニール袋を張った別のバケツに入れていきます。

 砂はバケツに入れてこうやって持っていきます。

 そうこうしている間にクロネコさんが来ました。残りの荷物をどんどん運び出していきます。この日は、クロネコさんのアルバイトの一人がなんと教え子でした。「先生! こんなところで何やってるんですか?!」ってびっくりしてましたが、何やってるって引越しだってば(^^;

 家財道具は6トン車にぎっしり一杯でした。荷物を見送って、教え子にも「みんなによろしくね」と別れを告げて、がらんとした部屋にカミさんと私とバケツとフィルター。いよいよ東京ともお別れだなあ。

 そこへカミさんの両親と姉が見送りに来てくれて、なんにもない部屋でおにぎりを食べました。

引越し初日(3)トラブル発生!
 腹ごしらえをしたら、いよいよ水槽を車に積み込む段です。水槽を台車に載せてエレベータで1階に下ろし、車に積み込みます。次に写真のフィルター類を運んで車に乗せます。他にも傷みやすい植木や貴重品など、自分で運ばなければならないものを積んだら、車は満杯です。

 ワゴン車の荷室に乗せたの様子です。ここで問題発生! 車のバッテリーからインバーターでAC100Vを取り出してフィルターを動かす予定だったのですが、電源をつないでもフィルターが動き出してくれません。あれこれやってみたのですが、どうやら電力不足のようです。フィルターの必要電力(W数)はインバーターの出力より十分少ないはずだったのですが、どうしても動いてくれません。仕方がないので、このまま電池式のエアポンプと簡易フィルターで行くしかなさそうです。魚のほうも、またフィルターの中のバクテリアのほうも心配ですが、いたしかたありません。

 バケツのフタを養生テープで固定して、とりあえずこれで出発です。何とか夜間だけでも宿の電源につなげるといいのですが。

引越し初日(4)出発!
 「しゅっぱーつ!」若干の不安をかかえつつ、午後2時すぎに東京を後にしました。住み慣れた街を後にするときカミさんが泣くかなと思ってたのですが、そんなこともなく、笑顔で走り出しました。首都高4号線を下って戸板学園の中学高校のある用賀を通って「さよなら、戸板!」、東名高速に入り、50km前後で運転を交代しながら走ります。運転交代でパーキングに入るたびに、バケツの中を覗いて魚が元気なことを確かめました。旅行と違って何日かで帰ってくる旅ではないので、見るものすべてがなんだか「見納め」みたいな気がして、感無量でした。静岡県の裾野I.C.を出たのが午後5時ごろでした。今日はこの近くの温泉ホテルに宿泊します。宿について、車から植木を降ろして駐車場に置かせてもらい、フロントで台車を借りてバケツとフィルターを部屋に運び込みました。部屋の電源でフィルターを回して、これで一安心。

 温泉に浸かって、富士山の見えるレストランで夕食をとりました。いやー、今日は疲れた。 部屋に戻ってちょっと水換えをしました。余計なバケツがなかったので、部屋のゴミ箱にコンビニ袋を入れてバケツ代わりにしました。こういうときのために、ビニール袋をたくさんもってきています。魚たちは全員元気です。強いなあ、こいつらは。

引越し2日目
 2日目は朝8時半に宿を出て、一日中高速をひた走ります。今夜は岡山の奥倉敷に宿泊の予定です。引越しで疲れた体なので、今日もカミさんと50km交代で休みやすみ行きます。昨夜は一晩中ろ過フィルターを回せたし、魚は心配なさそうです。いい天気です。「出発します」と実家にメールを入れて走り出しました。しかし、出発してしばらくは走っても走っても静岡県、その後は走っても走っても愛知県で、「今日中に岡山に着くのかな」とちょっと不安になりました。2泊3日でドライブがてらの引越し、といったのんびりした旅を想像していたのですが、意外に大変でした。10時に掛川、午前中かけてやっと静岡を過ぎて愛知県に入り、上郷S.A.で昼食。愛知県の小牧のあたりでしばらく渋滞にハマり、それから岐阜でまた少し渋滞、その後は滋賀を過ぎて午後2時半に京都それから大阪と、この辺はいいペースで駆け抜けて、3時半に西ノ宮、4時半に赤穂、5時に岡山入りし、5時半に奥倉敷の温泉ホテル「ニュー吉備路」に到着しました。私とカミさんと、両方の実家には「いま、どこそこ」とときどきメールを送っていました。実家では日本地図を指で追いながら私たちの移動の様子を心配していたようです。家族の絆というか、家族のありがたみというか、そういうものもこういうときに感じるものですね。

 宿では離れのようになった広いいい部屋に通されましたが、部屋までの間に段差があって台車を入れられません。困ってフロントに相談したら、力持ちの支配人さんが30kgもある重たいバケツをかかえて車から部屋まで運んでくれました。疲れた身体には、こういうサービスがとても嬉しいものです。これで二晩目も部屋の電源でフィルターを回すことができました。この宿は和風の部屋なのに床の間にLANコンセントがあって、高速インターネットが使えます。友達にメールを出したりできて助かりました。もう岡山まで来ている、その安心感でこの晩はカミさんと二人で生ビールをたくさん飲みました。

 翌朝もまたバケツを車まで運んでくださって、ほんとに嬉しい宿でした。上のニュー吉備路のページの「思い出写真館」の2004年8月のところに、私たち夫婦が疲れ切った表情で写った写真が掲載されています(^^;

引越し3日目(1)
 朝9時過ぎに宿を出て、今日は倉敷から広島までなので大した距離ではありません。いくらか余裕を持った気持ちで走れました。山陽道は長いトンネルの連続です。途中パラパラと雨も降りましたが、おおむねいい天気。10時ごろには広島県に突入、10時半には尾道を通過、広島I.C.を出て広島市安佐南区の新居に到着したのは11時半くらいでした。

 実家に到着の連絡を入れて、新居に入ります。とりあえずはバケツとフィルターを風呂場に運び込んで、フィルターを回します。魚も元気です。これで安心。あとは引越し荷物が来るのを待つばかりです。


引越し3日目(2)
 午後2時、クロネコさんのトラックが来ました。次々に荷物が運び込まれ、みるみるうちに部屋の中が段ボールの山。開梱サービスは頼んでないので、これからこの段ボールと格闘です。

 水槽は、これを機会に新品に買い換えました。東京で新しいのを買って持ってきたのです。古い水槽はカミさんの姉がほしいというので東京を出るときに進呈してきました。

 水槽台に水槽を乗せて位置を決め、まず底床を戻し、塩素中和した水を半分くらい張り、そこに石などを配置します。次にフィルターを設置して回し始め、水が澄んできたところでバケツから水と魚と水草を戻します。水草は短く切り戻してピンセットで植えていきます。底床やフィルターのバクテリアがダメージを受けているはずなので、いちおう活性炭も1パック沈めておきます。最後に二酸化炭素のボンベを繋いで、蛍光灯を乗せて、水温上昇対策のファンを乗せて、これでまずは完成です。ふぅ(^o^;

 あとは、水草が底床に根を張って繁茂していくのを楽しみに待つだけです。

 このようにして、私の広島生活は始まったのでした。

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